黄昏に翔ぶ
一浩が取り組んでいるフクロウシリーズの題名は、ドイツの哲学者ヘーゲル(1770-1831)の有名な言葉「the owl of Minerva spreads its wings only with the falling of the dusk(ミネルヴァのフクロウは黄昏時に飛び始める)」からの引用です。
古代ローマの神話に登場する知性と芸術の女神ミネルヴァが飼っているフクロウは、夕刻になると街へ飛んで行き、人々の知恵を集めて女神に報告したと伝えられています。人間が日々の暮らしの中で様々な経験を積み、一番賢くなったであろう夕暮れを待って、フクロウが現れる事を例え、あらゆる物事の本質(哲学)は、一つの歴史・文化が成熟期を迎え終わりが近づいた頃に初めて意味が解ってくるものだ、と説いたそうです。
しかし、これは決して何かの“終わり”を意味するものではなく、その次には夜明けがあり、そこからまた新しい時代が切り開らかれる事を意味する“希望の羽ばたき”とも解釈されています。
2008年の夏、神戸花鳥園にて加茂社長とお出会いし「フクロウ作品を創る意味」のヒントをもらいました。それは、父親の創ってきたフクロウ作品の模倣から始まった私が、改めて本物のふくろうと向き合う機会でもありました。
こうして生まれて来た作品を見て加茂社長がこの言葉を私に教えてくれました。
「今、現代社会は混沌としていてまさに時代の黄昏時を感じるが、この作品を見ているとミネルヴァのフクロウが翔び立つ予感を感じる」
陶芸家として自分らしさを模索していた私にとって、まさに初めての黄昏時が来たような気がしました。
果たして私のフクロウは翔び立てるのでしょうか・・・?
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